おわりに

最後に、本書で扱ってきた仕事の進め方と、長期的な成長やキャリアについての関係についてお伝えします。

「自分の強みや持ち味を生かした仕事がしたい」

そう思ったとしても、実現するのは簡単ではありません。
何より「強みや持ち味」といったものは、新入社員や若手社員などのキャリア初期から明らかになっているものではありません。働いていく中で発見し、磨き、場合によっては遠回りをしたり、偶然の機会に恵まれたりしながらつくられていくものです。

仕事における強みや持ち味は相対的なものでもあります。
あなたが強みだと思っていることが、他の多くの人にも備わっていることであれば、それを強みと呼ぶのは難しいでしょう。一方で、あなたにとって当たり前のことでも、他の人からみると「あなたにしかできないこと/あなたの持ち味」かもしれません。強みや持ち味というものは、働く中で多くの人たちと関わり合いながら見出していくものでもあります。

強みや持ち味を生かした仕事をしたいのであれば、まずはその「強みや持ち味」をつくらなくてはいけません。これが自分の強みかな? と最初に感じたことが正解とは限りません。複数の持ち味を組み合わせることで、強みとして輝き始めることもあるかもしれません。

強みや持ち味を探るためには、いろいろな機会に挑戦することが求められます。

たとえば、これ! と思った仕事をとことんやってみる。
あるいは、やりたい仕事かどうかはさておき、目の前にある仕事をまず真剣に取り組んでみる。
「どうせやるなら」と自分なりの工夫ができないか知恵を絞る。

もしかしたら、やりたくない、自分には向いていないと思っていた仕事に挑戦してみることで、新たな発見が得られるかもしれません。

そういったさまざまな挑戦や試行錯誤をしていくために、実は、1つ条件があります。それは「最低限の信用を獲得している」ということです。

キャリアの初期段階で、自分に向いていそうな仕事や面白そうな仕事、やりがいを感じられそうな仕事ばかり任せてもらえることはありません。あなたの気持ちとは関係なしに与えられた仕事を遂行し、発注者(上司やお客様)の期待にこたえる。それを繰り返していくうちに、基本的な仕事はきちんとやってくれるのだなという、最低限の信用が得られます。

信用が得られると、あなたに対して発注者はこう考えます。

「そろそろ、他の仕事も任せてみようかな」
「もう少し、自由にやらせてみようかな」
「こんな仕事も頼んだらやってくれるかな」

このように判断されて初めて、あなたのもとに「いろいろな機会」がやってきます。最低限の信用を得ることが、強みや持ち味を生かした働き方をするための第一歩なのです。

本書に書かれている内容で、直接的にあなたの強みや持ち味になりうる部分はありません。しかし、強みや持ち味を発見し育んでいくための土台を作るという意味では、きっと役に立つと思います。

今、あなたの目の前にある仕事は、それがずっとやりたい仕事かどうかに関わらず、あなたの未来をつくるために意味のある仕事です。

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詳解 仕事の進め方
“ちゃんと”だけではわからない「準備」「実行」「振り返り」
A5判 133ページ ¥1,650(税別)