仕事と問いをセットで与える

少し前のページで紹介した「研究員のプレゼンテーション」のエピソードの中で、研究員の上司が言った台詞を覚えていますか?

「いったい君のどういう言葉に反応を示すのかな?」

マネージャーのあなたに期待しているのは、仕事の指示と一緒にこのような問いを部下に与えてみることです。好奇心を刺激し、発見を増やすことを手助けします。

発見を増やすような問いを自在に立てられる部下はなかなかいません。マネージャーの後押しが必要です。「この通りやりなさい」と正解を教えるだけが指導ではありません。人は、具体的にこうやれと言われたことはすぐに忘れますが、自分でつかんだ答えは決して忘れません。自分で答えをつかむために「問い」を提供することが、指導者の役割であり醍醐味でもあります。

仕事から得られる発見を増やすための「問い」は、誰が作ろうがあまり関係がありません。よい問いであれば、上から押し付けられたものでもやる気が湧き出てきます。よくない問いであれば、自分たちで決めたものでもすぐにつまらなくなります。

よい問いを作るというのは、なかなか難しいものです。
ある会社の管理職研修で、部下に与える「仕事」と「問い」をセットで書き出してもらったことがあります。以下の2パターンのいずれかになってしまう管理者がたくさんいました。

1.漠然としすぎ

「何をやらせるか:○○業務」→「問い:○○業務のポイントは?」というような形で、後ろに~のポイントは? という言葉を付け足しただけです。これだけであれこれ気づけるのは、自力で発見を増やせる力を既に持っている部下だけです。もう少し焦点を絞り、意識を向ける範囲を狭くしたほうが発見をしやすいでしょう。

2. ただのチェックリストになってしまう

「◯◯は出来ているか?」「△△は確認したか?」「☆☆は問題ないか?」…これらは問いではなくて、ただのチェックリストです。発見どころか、言われた通りにやりなさいというメッセージを強めるだけになってしまいます。

チェックリストに陥ってしまう質問の多くは「はい/いいえ」で答えられる形式の問いになっています。そうではなく自由に答えられる形式の問いを作るのがコツです。前項の「問いのリスト」は、ほぼ全てが自由に答えられる問いです。

「もっと意識を高くもて」とか「視野が狭い」というような安直なハッパのかけ方しかできない上司に、部下は付いていこうとは思いません。

あなたの部下は、より良い仕事のやり方を研究します。

あなたは部下の研究心に火がつくような、問いの与え方を研究してください。

・本ページは、書籍「部下の自立を引きだすための マネージャーの言語化支援」の内容の一部を限定公開しているページです。他の公開中のトピックは「目次」から確認してください。

「部下の自立を引きだすための マネージャーの言語化支援」
A5判 156ページ ¥1,800(税別)